mixiでピュアリーさんが
「ホメオパシー信者がよく使うレトリックとそれに対する批判方法まとめ」を書いていました。
私も自分なりにまとめてみたいと思っていたので、ピュアリーさんや様々なブログなども参考にさせてもらい、書き連ねてみました。
コアな信奉者相手への説得には役立たないでしょうが、その信奉者から身を守るためには有効かも知れません。
何か不備があれば修正していくのでご指摘下さい。
【ホメオパシーには200年の歴史があり、効果がなければこれほど使われ続けるはずがない】まずホメオパシーの信奉者には現代医学(特に薬品)を否定する人がいますが、もし現代医学が間違っているのなら、なぜこれほどまでに広がっているのでしょう?
製薬会社や医師がデマを流し続けたからですか? 真実を隠し続けたからですか?
では、それと同じことをホメオパシー側がしていないとなぜ言い切れるのでしょう?
また瀉血療法は古代ギリシャ時代から18世紀まで使われ続けましたが、現在では回復どころか寿命を縮めたケースも少なくなかったことが分かっています。
長く続いたから正しいとは言えないのです。
【ホメオパシーは各国で保険診療になっている】イギリス国会ではホメオパシーに効果が確認できないことを認めながらも、保険診療を継続する決断をしています。
それは既に使用者が多いために中止すると社会的影響が大きいからとか、チャールズ皇太子がホメオパシーの会社を経営しているからとか、様々な憶測が言われています。
とにかく、保険診療だから効果があるというわけではありません。
【ホメオパシーは代替医療の一つである】代替医療の呼称に定義はないに等しいものです。
たとえば私が「念力でどんな病気も改善させる!」と言っても、代替医療に入ってしまいます(もちろん私はそんなことをできません)。
効果が確認されていないホメオパシーもこれと同様ですから、代替医療と呼ぶことには何の価値もありません。
それでももし「ホメオパシーは代替医療の一つだから~」という文脈を使うのなら、まずは代替医療という言葉をどんな定義で使っているのか、効果のない擬似医療とどのように区別しているのかを明確にしてください。
【ホメオパシーに効果があったとする学術論文がある】それらは研究法に不備が指摘されているものがほとんどです。
現段階でホメオパシーに関する検証は、2005年8月号のランセットに掲載された論文や、イギリス議会が2010年2月に出した報告書がもっとも包括的で信頼性の高いものになっており、ホメオパシーの効果は否定されています。
今後ホメオパシーに効果があるとするならば、これら以上の信頼性のある研究でなければなりません。
【ホメオパシーの効果を否定する論文はバイアスがかかっていて信頼できない】そう言える根拠はなんでしょうか?
2005年8月号のランセットに掲載された論文にしても、始めに採用する論文の条件を決めてからメタアナリシスを行なっています。
意図的にホメオパシーに効果があったとする論文だけを不採用にしたのではありません。
もし根拠なくバイアスとか陰謀とか妄想しているのなら、同じように根拠なく「ホメオパシーは効く」と妄想しているのかも知れません。
【科学的に証明されていないからといって、効果がないとは言えない】これを言う人は科学の意味を勘違いしています。
今回の問題ではホメオパシーがどのように作用するかは問題にされていません。
あくまでホメオパシーに効果があるかのみが問われているのです。
それを確かめるための方法が科学的な統計手法ということになります。
【科学とか統計とか言われると、余計に胡散臭い】何を胡散臭く感じるかは個人の問題ですが、統計的に調査することがもっとも説得力を持って確認する方法です。
【ホメオパシーは個々人に合わせた治療法なので、統計的に効果を確認することはできない】違います。
ホメオパシーの信奉者からすれば、熟練のホメオパスが時間をかけて個々人に合わせた砂糖玉を施せば、効果が期待できるという主張のはずです(もしこれを否定するのなら、熟練のホメオパスが選んだ砂糖玉であっても効果がないということになります)。
それならば熟練のホメオパスが砂糖玉を選び、相談者に施す中で、二重盲検法で調査が行なえます。
【ホメオパシーの効果は科学では測定できない】それならばなぜ、効果があると言えるのですか?
効果が測定できないのなら、効果があるとも言えないはずです。
【ホメオパシーでは一分子も含まれていなくても、元の成分の記憶が残っている】三通りお答えします。
1.
分子の有無や、記憶の有無も関係ありません。
大切なのはただ一点、効果があるかどうかの検証です。
たとえどれだけ分子や記憶が入っていても、効果がなければ意味がありません。
2.
どうやって記憶が残っていることを確認したのですか?
3.
水はホメオパシーに使われる以前にも、様々な物質に触れています。
なぜそれらの記憶はなく、対象の成分だけの記憶があるといえるのでしょう?
そしてもし特定の手法で他の記憶を消去できるとするならば、それをどうやって確認したのですか?
【自分はホメオパシーで治った。ホメオパシーで改善した人を知っている】それは『三た論法』と言われるもので健康食品やダイエット器具などでよく使われる宣伝手法ですが、説得力はありません。
三た論法・・・「治療した・治った・治療効果があった」の三段論法での宣伝方法。しかしそれがプラセボ効果なのか、たまたまそのタイミングで治っただけなのか、どのくらいの頻度で起こるものなのか(もしかしたら1億人に1人なのかも知れない)が分からないため、効果の検証には役に立たない。
【効果を確認するのに労力を使うよりも、目の前にいる人の役に立っていくほうが大切】まずこの言い分は、効果を検証することから逃げるための言い訳とも受け取れます。
また現状ではホメオパシーに強い逆風が吹いており、本当に効果があるのならそれを証明するほうがホメオパシーを信頼する人が増え、より多くの人の役に立てます。
それをしないのは単なる独りよがりでしかありません。
特にホメオパシーの団体なら効果を組織ぐるみで検証していくことは容易なはずですから、それをしないことには強い疑念を持たざるをえません。
【プラセボでも効果があるなら良いではないか】一般的な薬でもプラセボはあり、もちろん薬効もあります。
それなのに薬効がなくプラセボだけのホメオパシーを使う合理性はありません。
またプラセボと開き直るのなら、はじめから希釈などはせず、ただの砂糖玉を使えばよいのです。
【プラセボが働かないはずの動物にも効果があった】これはピグマリオン効果で説明できます。
下記のページを見れば分かるように、動物が対象であっても観察者(人間)の期待が結果に影響してしまいます。
つまり動物といえど、効果の確認には二重盲検法が必要です。
『ピグマリオン効果 - Wikipedia』【ホメオパシーに効果がないというのなら、その証拠を出せ】これはいわゆる
『悪魔の証明』と言われるものであり、存在しないものを証明することは論理上不可能です。
それが存在するとしている側、この場合はホメオパシーに効果があるとする側に立証責任はあります。
↑ ↑※これについて疑問をいただきましたが、やはり『ない』ことの完全な否定は現実的に不可能だと思っています。たとえば、『砂糖玉に含まれている元の成分の記憶は、実験で疑うオーラを持つ人が近づくと壊れてしまう』とか、『たまたま今回の実験での被験者に効かなかっただけで、他の被験者なら効く可能性がある』とか、何かしら言いがかりをつけることは可能です。それがどんな屁理屈に感じるものであれ、先入観を捨てて科学的な見方をするならば、全ては『証明されるまでは仮説』なので絶対にないとは言い切れません(それを言い切ってしまうと、根拠なく「ホメオパシーは効く!」と言うのと同じレベルになってしまいます)。そして全ての言いがかりを研究によって一つ一つ否定していくことは現実的に不可能です。このようなことから立証責任は『ない』とする側ではなく、『ある』とする側にあります。
ついでに書くと、統計であっても過誤の可能性があるので、その結果が絶対とは言えません。しかし他の『三た論法』などよりは遥かに妥当性が高く、どちらが真実に近いかは言うまでもありません。
【ホメオパシーは副作用がないから安心だ】微量の砂糖を摂取するだけですから、副作用がないのは当然です。
またどんな場合でも副作用がないということは、効果もないと言っているのと同じです。
【現代医療の医療ミスで死んだ人は大勢いるが、ホメオパシーで死んだ人はいない】砂糖を舐めてからといって死ぬ人がいないのは当然です。
それに対して現代医療でも医療ミスがあることは事実ですが、それ以上に大勢の命を救っています。
たとえば昔は盲腸になると半数ほどが命を落としていましたが、現代の死亡率は0.3%ほどです。
ホメオパシーではこのように改善効果が明らかになっているものはありません。
【現代医療であっても完全ではなく、ホメオパシーはそこを補完するものだ】現代医療が完全でないことと、ホメオパシーに効果があるかは別問題です。
いくら現代医療の不備を指摘しても、それでホメオパシーの効果が認められるわけではありません。
【ホメオパシー以外にも効果が証明されていない療法もある】だとしたら、それらも全て再検討されるべきです。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」のように、他の療法にも問題があるのだからホメオパシーに問題があっても見逃すべきだ、ということにはなりません。
【ホメオパシーはぬくもりのある医療に必要】 ←日本ホメオパシー医学会の主張
まずは効果を検証することが先決です。
もし効果が証明されないのなら、『ぬくもりのある医療』以前に、『ぬくもりはあっても詐欺』でしかありません。
またホメオパシーを使わない医療従事者は、ぬくもりのない医療をしているというのでしょうか?
『ぬくもり』といった別の話題を出すことは、もっとも大切な効果検証から逃げているとも受け取れます。
【なんと言われてもホメオパシーを使う自由はある】そのとおりです。
日本学術会議の談話でも次のように明記されています。
「ホメオパシーについて十分に理解した上で、自身のために使用することは個人の自由です。」
ただしあくまで思想、信教の自由においてであり、個人の枠をこえて他者に間違った情報を伝えてはいけません。
もちろん医療機関でも厳に慎まなければなりません。
お守りや祈祷、幸運の壷を信じるのと同等に、ホメオパシーを信じるのも個人の自由ですが、それを他者に強制したり、医療機関で勧めるのは倫理に反しています。