数日前のニュース。
故人の霊を呼び寄せて言葉を伝えるイタコの「口寄せ」に、自殺者の遺族(自死遺族)が癒やされるケースが多いことに注目し、その理由を探る文部科学省の補助金助成研究が、今月末からスタートする。 (中略) 研究は、青森県立保健大健康科学部の藤井博英教授らが実施。調査は3年間で、今年度は、県内のイタコを訪れる自死遺族5人に協力を求め、口寄せを受ける理由や受けた直後の気持ちの変化、話の内容や口調などイタコのどこに癒やされたか――などを聞く。 藤井教授によると、口寄せを受ける自死遺族には、他の遺族とは異なる苦しみがある。自ら命を絶った理由を故人本人から聞けず、自殺を防げなかった自分を責め続けてしまう。 こうした苦しみは、話を聴いてくれるだけの通常のカウンセリングでは解決できないことも多い。 このような遺族に、イタコが呼び寄せた「故人」は決して恨み言を言わず、「世話になって本当に感謝している」などとお礼の気持ちを伝える。さらに「私のために毎朝線香を1本あげてください」など、簡単にできるお願いをする。 |
※元記事を見たい方はこちら。つまり、“自発的に”イタコに訪れる自死遺族が対象なわけですね。
この時点で研究対象が偏っており、初めから結論ありきの研究のような気もします。
本文には研究結果から『カウンセリングや遺族同士のケアに生かせる部分を提案する』とも書いてありましたが、そもそも領域が違いすぎるのではないでしょうか。
また以下の文章はどうなのでしょう?
>イタコが呼び寄せた「故人」は決して恨み言を言わず、「世話になって本当に感謝している」などと
>お礼の気持ちを伝える。さらに「私のために毎朝線香を1本あげてください」など、
>簡単にできるお願いをする。
これってどのような遺族が来たとしても、決まり文句を言っているだけと白状しているようにも受け取れます。
もしイタコが呼び寄せた故人が皆同じことしか言わないのなら、あえてイタコに呼び寄せてもらう必要自体はないわけで。
私がしているイメージ療法では先立った人と再会したいと要望されることがあります。
その時には非常に個別的なやり取りが行なわれ、決まったメッセージが返ってくるわけではありません。
そしてクライアントと故人の間だからこそ理解できるやり取りを体験することで、こわばっていた感情が解放され、癒されていくのです。
その時に涙を流される方も多く、誘導しているこちらにも感動が伝わってきます。
ひるがえってこのニュース記事を読む限りでは、イタコが定型文で対応しているかのような印象を受けます。
もしかしたら実際は違うのかも知れませんが、コールドリーディングという可能性も捨て切れません。
また今回の研究で何かの結果が出たとしても、あくまで“自発的に”イタコを訪れた自死遺族に言えることです。
しかし情報が一人歩きして、『イタコに会えば癒される』とか、『霊能力者に会えば癒される』と、情報が改ざんされていくことも考えられます。
むしろ霊感商法は商魂たくましい人が多いですから、間違いなくこの情報は何らかの形で利用されてしまうでしょう。
それに“自発的に”が無視されて、本人は親切心のつもりで『イタコに会えば悲しみが癒えるらしいよ』と助言してしまう人も出てくるかも知れません。
研究者にはぜひともこのようなリスクも考慮の上で、研究をしていってもらいたいと思います。