心理職の国家資格化の話があるとはいえ、現状ではカウンセラーを名乗っていても質にばらつきがあり、非常に玉石混交な状態です。
そのため一度ここで、一人の臨床心理士として私なりの見解を書いておきます。
けっこう賛同をいただいていますが、もしご意見などがあれば修正していきたいと思いますので、遠慮なくコメントなどでお知らせください。
カウンセラー志望の人を対象に書いていますが、カウンセリングを受けたいという人にも役立つと思います。
「カウンセラーになりたい」という人へカウンセラーを名乗るのに法的制限はありません。ですから「私はカウンセラーだ」と自称すれば、今すぐからでもあなたはカウンセラーです。
↑↑いきなり意地悪な書き方で申し訳ありませんが、単に「カウンセラーになりたい」だけならこのような回答になります。
しかし「カウンセラーになりたい」とは、「カウンセラーとしての仕事で食べていきたい」や、「カウンセラーとしてクライエント(相談者)の役に立ちたい」という事だと思います。
そのためにはまず、
①どのようなカウンセラーになれば仕事に就き収入を得られるか。
②どのようなカウンセラーの勉強をすればクライエントの役に立てるようになるか。二点を検討しなければなりません。
①について、もしあなたが何らかの分野で名を馳せているのなら、あなたに相談したいと思う人は多いでしょう。ですからカウンセラーとしての仕事が成立する可能性は高まります(ハロー効果と呼ばれるものですが、詳しくは検索してください)。
有名人がやっている悩み相談はこれに当てはまります。それらは臨床心理学的知見に基づいていない単なる説教や指導もあるかも知れませんが、それでカウンセラーを名乗っても法的に罰せられる事はありません。
また、企業などにコネがあってあなたをカウンセラーとして確実に雇用してもらえるのでしたら、この場合も今からでもカウンセラーとして食べていく事はできます。相談者が全然来なくても、あるいはどんなにひどい対応をしたとしても、カウンセラーを名乗り続けられるわけです。
ただし倫理的問題は別です。
上記のような世界に害悪をばら撒いているようなエセカウンセラーに私は反対です。
そしてあなたが有名でもなくコネもないとしたら、職にありつけるカウンセラーの資格を取得する必要があります。②については、どこのカウンセラー養成機関でも自らが「ここで学んでも役に立たない」とは言いません。しかし養成内容を比較すると大きな開きがありますし、資格を取ってもとても実践で使えるレベルではないものも多いようです。
そのような養成機関の場合は資格取得者の多くがカウンセラーとしての職に就いていなかったり、自分で開業(しかし実質は閑古鳥が鳴いている)ばかりだったりします。
つまり時間と労力をお金をつぎ込んでも、仕事として収入を得る事はできません。
このような事から①と②を最低限満たせる心理職の資格として、私は「臨床心理士」しか知りません。臨床心理士であっても就職は厳しいのが現実ですが、臨床心理士でなければ応募さえもできないことが多々あります。
またその就職の厳しさのために、現在臨床心理士は多少条件が悪くても職を求めていっている傾向があります。
つまり賃金や領域によっての住み分けはありませんから、もしあなたが臨床心理士以外の道でカウンセラーを目指すなら、臨床心理士以上の有能さを示さなければなりません。
(前に「臨床心理士は病人の相手が主だ」と嘘を言っている人がいましたが、臨床心理士は教育や司法、福祉など、とにかくあらゆる分野に進出しています)。
もちろん臨床心理士同士での競争もありますが、臨床心理士でなければその時点で大きくマイナスになるということです。
ちなみに臨床心理士だと大学、大学院と入試に合格して進学し、養成期間は大学院入学からでも最短3年(大学からなら7年)がかかります。
その間に知識だけではなく経験(模擬ではなく実践)も積んでいきます。
また臨床心理士試験の合格率は6割台ですが、受験者全員が大学院修了者であることを考慮すれば簡単な試験だとはとても言えません。
それらをクリアするだけの力を身につけてから臨床心理士を名乗っているということです。
今から臨床心理士以外のカウンセラーを目指す方は、このような臨床心理士よりも選ばれるカウンセラーにならないといけないわけです。
あと臨床心理士ではない方に、“井の中の蛙”を感じることがあります。スクールによっては簡単な傾聴訓練や観念的な共感などしか教えないため、そこの卒業生もそれで十分と思ってしまうのです。
講師がその程度の教育しかしないので仕方ありませんが、勘違いをして実際には力量不足であるにも関わらず、「自分はカウンセリングができる!」となってしまいます。
本人としては悪意がなくクライアントの役に立とうと思っているのかも知れませんが、自覚がないだけにクライエントにとっては不幸です。
また確率の問題もあります。
臨床心理士もピンキリですが、上記したようにいくつもの壁を乗り越えないと臨床心理士にはなれません。
つまりハズレの確率が少なくなります。
それに対して他の資格だと取得が容易なものも多いため、有能な人もいるでしょが、そうでない人がいる確率も増えます。
カウンセリングを受けたいと思っている人の心情としては、ハズレの少ないほうを選びたがるでしょう。
つまりどんなに有能でもカウンセリングをしなければ実力は発揮できませんから、臨床心理士でなければその実力を出す機会さえもないかも知れないのです。
カウンセラーを名乗るのは簡単ですが、相談者が他のカウンセラーではなくあなたを選んでくれるようになるのは容易な事ではないのです。
無料でのボランティアなら物好きな人が来る可能性もありますが、カウンセリング料をもらうのなら、払うほうも無駄金にならないようにカウンセラーを厳選します。
まとめるとこうなります。
●コンスタントに相談者が来る事や就職のあてがある方は、今のままでもカウンセラーを名乗って仕事をすることが可能です(倫理的問題を除く)。
●カウンセラーの養成機関の中には資格を取っても実践のレベルには程遠く、全く就職の役に立たないものが多く存在します。
●就職は臨床心理士でなければ不利になり、応募さえもできないことが少なくありません。
●ボランティアのカウンセラーということなら、「いのちの電話」の相談員は比較的容易になれるようです。~~追記~~
私はスピリチュアルな分野にも興味がありますが、だからこそ、安易にチャネリングやリーディングができるという人を嫌悪します。
それらを完全に否定するわけではありませんが、まずはこの現実の世界で地に足をつけてください。
社会に適応できない人がそのような方法で生活しようとするのは、害悪でしかありません。
スピリチュアルを省いても社会人として尊敬できる人、そういう人でないとスピリチュアルは単なる現実逃避の手段になってしまいます。
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