痛ましい事件が起こっています。
山口市の助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」とい う錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。 |
※元記事を見たい方はこちら。この錠剤はホメオパシーのことのようです。
これはある物質を水やアルコールで溶け込ませ、それをどんどん希釈していったものを砂糖玉に染み込ませたものです。
砂糖玉の大きさはほんの数ミリで、希釈は一般に100倍に薄めることを30回繰り返すため(もっと薄めることもある)、元の成分は1分子も入っていないことがあるそうです。
この時点で胡散臭く感じますが、作り方がどうであれ問題は効果があるかどうかです。。
しかしそれについても各国で様々な調査が行なわれているにも関わらず、きちんとした研究ではプラシーボ以上の効果は確認されていないようです。
私が以前読んだ『代替医療のトリック』でも上記と同様、ホメオパシーの効果には否定的に書かれていました。
私がまず知りたいのは、この助産師がどのような情報に基づいてホメオパシーを実践していたのかです。
少なくとも今回の事件に限って言えば、助産師が投与していた砂糖玉(レメディと呼ばれている)がビタミンKの代用となると判断した根拠が何かです。
もしそれが信用に足るものでなければ、この助産師は自分の誤った信念のために人を殺したことになります。
自分の責任の範囲内では思想の自由がありますが、医療行為は別次元の話です。
特にこの助産師の場合は砂糖玉しか与えていないにも関わらず、母子手帳にはビタミンKを与えたと記入しており、ホメオパシーの効果の問題とは違った悪質性も見受けられます。
ちなみに現代看護学の生みの親であるナイチンゲールは、ホメオパシーについてこのように述べています。
ホメオパチー療法は素人女性の素人療法に根本的な改善をもたらした。というのは、その用薬法はまことに良く出来ており、かつその投薬には比較的害が少ないからである。その「丸薬」は、どうしても善行を施して満足したい人たちが必要とする一粒の愚行なのであろう。というわけで、どうしても他人に薬を与えたい という女性には、ホメオパチーの薬を与えさせるとよい。さしたる害とはならないであろう。 |
ここに込められている皮肉が分かるでしょうか?
素人が安易に薬を与えて薬害を起こすよりは、毒にも薬にもならない(つまり効果がない)ホメオパシーを与えたほうがましだと言うのです。
このナイチンゲールの指摘は、効果がないということでは今に到るまで様々な研究結果が支持していると言えます。
しかし今回の事件のようにホメオパシーを盲信することは人の命を奪うことにもなりかねず、さしたる害がないとはとても言えないものです。
親になったばかりの私としては、このニュースはとても気持ちを逆撫でされるものでした。
また熊本代替療法研究会に所属している身としても、有意義な代替療法とそうでないものとを、正しく情報提供していくことが必要だと感じています。