気になったニュース。
読売新聞が3~4月、全国の精神科診療所にアンケート調査を行ったところ、7割が「日本のうつ病治療は薬物に偏っている」との認識を示した。 (中略) 優先すべき治療として、患者の話を聞いて問題解決を図る精神療法や、仕事を減らしたりする「環境調整」も多く挙がった。 |
7割というのはけっこうな割合ですよね。
それだけ現場でも精神療法や環境調整の必要性が認識されているということでしょうか。
しかしそう思っているのなら、なぜもっと薬物療法以外を実践しないのかと思ってしまいます。
アンケートは精神科診療所に尋ねているのです。
この結果は精神療法や環境調整が大切だと思いながらも、それを実践できていない現場の実情を表しています。
まあデータとしては1477施設中119施設が回答ということで統計的に弱いところがありますが、回答していない精神科診療所がどのように考えているのか気になるところです。
効率で言えば短い診療時間で大量に薬を出したほうが儲かるわけですし、現状維持のほうが(患者ではなく自分たちのためには)良いと思っている人も多いのかも。
そう考えると、よほど精神科診療所が増えてサービス競争になるか、診療報酬が改訂されて精神療法や環境調整をしたほうが儲かるとならない限り、全体の質が改善していくことは難しいのかも知れません。
薬物療法だけでも十分な効果があるのなら、このような結果を現場の人達が出すわけがありません。
英国は軽症のうつだと最初にカウンセリングや運動などを勧めているそうですが、薬物療法が中心の日本との改善率の比較が気になるところです。
でも確か、精神療法のほうが薬物療法よりも長期的な予後は良いというデータがあったはず。
症状によっては併用になる場合も多いでしょうが、うつは認知(認知症の意味ではなく、自分や世界に対しての考え方)の問題が絡んでいることが多くあります。
個人的経験では、認知が絡んでいないうつの患者はいないと思えるほどです。
だとしたら薬物療法は対処療法にしかなりません。
薬物療法で症状が緩和されたことで気持ちに余裕がでて、それが自己治癒につながることはあるでしょう。
しかしそういう人ばかりではないからうつの患者は減らず、薬を飲み続け、国の医療費が増大していく事になります。
薬物療法の効用を否定するつもりはありませんが、それに偏重してしまうと薬が合わない人が蔑ろにされてしまいます。
精神療法、環境調整、運動、休養など、どれも場合によっては効果があるのですから、様々な選択肢が選べるようになることが必要です。